2016年1月2日土曜日

映画「パルムの僧院」を読んで



1948年にフランス制作された映画で、1839年にフランスで出版されたスタンダールの同名の小説を映画化したものです。ナポレオン戦争直後のイタリアのパルマ(フランス語でパルム)を舞台としており、王侯貴族は復活し、民衆を抑圧し、自由主義運動が高まっていました。
















イタリアは、中世以来小さな独立国家が多数存在し、一時ナポレオンにより征服されますが、ナポレオン失脚後再び分裂してしまいます。映画の舞台は、そうした小さな独立国家の一つパルマ公国です。実は、ナポレオンはオーストリア-ハプスブルク家の姫マリー・ルイーズを妻に迎えますが、ナポレオン失脚後彼女にはパルマ公国が与えられたため、この小説の時代のパルマの支配者はマリー・ルイーズでしたが、小説ではまったく別の専制君主が支配していたという設定になっています。 
 スタンダールは、富裕な家庭に生まれ、ナポレオンの下で軍人となりますが、ナポレオン失脚後イタリアに渡り、イタリアで遊びまくったようです。この映画は、この時の経験に基づいていると思われます。文芸思潮としては、当時ロマン主義が全盛でしたが、感情表現を重視するロマン主義に対して、事実をありのままに描く写実主義が生れつつありました。この小説は、こうした写実主義の先駆的な作品の一つとされています。
 主人公は、当時23歳のファブリス(ファブリウス)・デル・ドンゴ侯爵で、幾分軽薄ではありますが、あまり憎めない、直情型で女たらしの、ハンサムな青年です。彼は、ナポレオンに憧れ、ワーテルローの戦いに参戦しますが、ほとんど戦わない内に負傷して逃げ帰ります。パルムでは、叔母であるサンセヴェリーナ公爵夫人ジーナの世話になり、彼女のコネで聖職者の身分を手に入れます。しかも彼女はファブリスを男として愛するようになりますが、彼はあちこちで恋をし、決闘までし、さらに人を殺してしまいます。
 ジーナは、頼りないファブリスの面倒をみ、彼女に対する大臣や大公の好意を利用して、ファブリスのために聖職者の地位を手に入れてやったり、彼が捕らえられると脱獄させたり、大公の暗殺まで行います。一方ファブリスは、牢獄の窓から監獄長の美しい娘クレリアを見つめ、幸福に浸っています。呑気なものです。それに対して、クレリアは侯爵夫人のファブリス脱獄計画を手伝うことになりますが、それは父を裏切ることを意味しましたから、神の前で二度とファブリスに合わないことを誓い、父が決めた婚約者と結婚します。しかし、結局二人は不倫を重ね、小説と映画では多少異なりますが、恋が成就されないことを知ったファブリスは、パルムの修道院で生涯を送ることになりました。
スタンダールの代表作「赤と黒」の主人公もそうですが、どうも彼が描く主人公は、自分の欲望な忠実な人物のようです。そして、その欲望のために身を滅ぼしていきます。「赤と黒」も映画化されているようで、私ははるか昔に原作を読んだのですが、映画は観ていません。むしろ「赤と黒」の方が、王政復古期のフランスを描いており、歴史的にはこちらの方が参考になったかも知れませんが、「パルムの僧院」も、ナポレオン失脚後のイタリアを描いており、それなりに参考になりました。



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