2016年10月26日水曜日

「エリザベス1世 大英帝国の幕あけ」を読んで

青木道彦著 2000年 講談社現代新書
 本書は、ずいぶん前に著者から献本された本で、エリザベスに関する本は、すでにそれまでに何冊も読んでいたため、多忙にまぎれて、結局今日まで読んでいませんでした。また、この間にエリザベスに関する映画を何本か観て、それについては、このブログの「三人の女性の物語」(http://sekaisi-syoyou.blogspot.jp/2014/01/blog-post_1222.html)で紹介しています。
 本書は、エリザベス自身というよりも、エリザベスを当時の国際関係の中で捉えています。この時代の国際関係はとても複雑で、当時は二流国でしかなかったイングランドが、いかに国際関係の操作に腐心したかが、大変分かりやすく記述されています。また、アルマダ海戦については、大変生き生きと描き出されていました。
 全体に、知識としては知っていることが多かったのですが、それでも私が勘違いしていた点を幾つか発見しました。とくにエリザベスが即位のときに、「私は国家と結婚している」と述べたことについて、彼女がイングランドのためにすべてを捧げる決意の表れとして説明され、映画「エリザベス」でも、この言葉を述べる場面がクライマックスとなっていますが、本書によれば、これは戴冠式の決まり文句だそうで、男性の君主も同様の発言をしているそうです。私たちは、いくら知識を身に着けても、常に多くの誤解をしていることに気がつかされます。

 エリザベスについては、過去にあまりに崇拝されすぎたという経緯があり、今日では彼女についての否定的な側面の見解も現れており、本書ではそうした傾向にも配慮されています。

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