2017年1月11日水曜日

「北方から来た交易民」を読んで

佐々木史郎著 1996年 NHKBOOKS

 本書は、アムール川下流域のサンタン人と樺太・蝦夷のアイヌとの交易を扱ったものです。この交易の背後には、中国と日本があり、この地域が一つの交易圏を形成していました。以前に、日本史の側から、部分的ではありますが、サンタン貿易について読んだことがあり、奥州の南部の鉄釜が、この地方で広く重宝されているということを読んだことがあります。南部の鉄釜は品質が良く、中国産の鉄釜の5倍ほどの価格で取引されていたそ
うです。











 本書は、こうした交易圏についても詳しく述べられていますが、それよりもサンタン人そのものについて、相当詳しく述べています。サンタン人の居住する地域では農耕は困難ですので、まず漁業、さらに狩猟が生業となりますが、同時に毛皮を販売する商人でもあり、中国からは穀物や絹を輸入し、絹は日本にも販売されました。毛皮の中でもクロテンが大変珍重されましたが、クロテンは小さく、採れる毛皮も肉も少なく、さらに毛皮に傷をつけないように捕まえる必要があったため、猟師はあまり好みませんでしたが、商品用としては貴重でした。
 サンタン貿易は、そうとう古くから行われていたようですが、本書では交易が最も発展した18世紀から19世紀にかけての時代が主に述べられています。この時代は、中国東北地方出身の清が中国を支配し、サンタン人も清の支配を受け入れていたため、貿易が活発になったそうです。しかし、やがて清が衰退し、ロシアが進出すると、この交易も衰退していきます。なお、20世紀の初頭に、ロシアの軍人がこの地方を探検する際に、地元の猟師デルス・ウザーラを案内人としました。この探検の体験談は「デルス・ウザーラ」として出版され、映画化もされました。























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