2017年4月8日土曜日

映画「ある公爵夫人の生涯」を観て

2008年にイギリスで制作された映画で、18世紀後半に実在したあるイギリス貴族の夫人の半生を描いています。原題は「公爵夫人」です。映画では、特に大きな事件が起きる分けではなく、この時代の貴族社会の複雑さが淡々と描かれています。なお、この貴族はダイアナ妃の祖先に当たるそうですが、そのことは、この映画の内容とは直接関係ありません。
 この時代のイギリスは、産業革命が進み、インドの植民地化が進むなど、大英帝国への道を突き進んだ時代でしたが、同時にアメリカの独立、フランス革命、ナポレオン戦争などが続き、困難な時代でもありました。政治的には、ブルジョワ階級が成長し、議会制度も発展していきますが、貴族はなお大きな力をもっていました。
 主人公のスペンサー伯爵令嬢ジョージアナは、17歳の時に、イギリスでも屈指の大貴族であるウィリアム・デヴォンシャー公爵に嫁ぎ、デヴォンシャー公爵夫人となります。彼女は美しく、また機知に富んでいたので、社交界の華となります。しかし、この結婚で夫が望んだことはただ一つ、つまり彼女が後継者となる男子を生むことで、二人の間にはほとんど会話もありませんでした。彼女は数回男児を流産した後、二人の女児を出産、この間夫はメイドに手をだし、さらに彼女の親友にまで手を出します。しかしやがて男児が生まれ、彼女は妻としての義務を果たしました。その後彼女は、チャールズ・グレイという若い野心的な青年政治家に恋をし、子供まで生みますが、結局彼とは別れ、今まで通りの生活を続け、1806年に48歳で死亡します。
 貴族の夫人としての彼女の一生は、それ程特別なものではなかったでしょう。貴族は皆後継者を望み、体面を重んじます。社交界でのきらびやかな生活とは裏腹に、家庭では単調で愛のない生活が続きます。それがほとんどの貴族の夫人の一生でした。しかし実は、ウィリアムはジョージアナを愛していました。彼は堅苦しい貴族の家に生まれ育ち、愛情を表現する術を知らなかったのです。その意味で、彼もまた不幸でした。この映画で一番存在感があったのは、ジョージアナよりウィリアムだったように思えました。そして結局、長男が目出度く公爵家を継ぎますが、なぜか彼は生涯結婚せず、彼の代で名誉あるデヴォンシャー公爵家の直系は絶えることになります。
 なお、ジョージアナの浮気相手だったチャールズ・グレイは、後に首相となり、1832年に第一回選挙法改正を実施しました。また、映画でしばしば登場するバースは、温泉のある保養地で、当時多くの貴族がここに別荘を建てていました。そのため、ここには18世紀の建造物が多く残っており、今日世界遺産となっています。なお、バースという地名は、風呂―bathに由来します。
 何だかよく分からない映画でしたが、それでも何と無く面白い映画でした。


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